自動車保険見直しガイド
保険

自動車事故に遭った場合に保険を使う事を考えますよね。ぱっと思い浮かぶのは自賠責保険ですが、事故の状況によってはその他の保険を使用する事もできます。他の保険の中で使用する事が多いのが通勤中や仕事中の事故を対象としている「労災保険」です。

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交通事故と労災保険

労災保険では通勤中の交通事故の事を通勤災害、仕事中の事故の事を業務災害としています。ただ全ての事故が労災として認められるわけではありません。

業務災害として認められるためには、「業務遂行性」と「業務起因性」があったかどうかが問題になります。業務遂行性とは使用者(事業主)の支配・管理下にある状態をいい、社内で業務をしている時や使用者の命令で社外で業務をしている時などは業務遂行性があると考えられます。

業務起因性とは業務内容や仕事場の設備などが原因で事故が起きた事を言います。通常普通に仕事をしていれば社内であれ社外であれ業務遂行性と業務起因性は認められると思います。例えば営業や運送業などの業務で運転をしている際の交通事故などが業務災害として認められます。

通勤災害の「通勤」というのは家から職場までの移動と職場から家に帰宅するときの移動です。ただ朝寄り道をする人はなかなかいないと思いますが仕事帰りにはまっすぐ家に帰らない事は多々あると思います。このような寄り道をした場合の事故も通勤災害と認定されるのかが問題になります。

通勤災害として認められる要件

■就業の為の移動であること
■住居と職場の移動
■合理的な経路及び方法

1つ目の要件「就業のための移動」は通勤ですので仕事をするために会社に移動するのですから当然の要件ですが、無駄に早く出勤した場合や帰宅の際に遊びに行った場合などはこの要件を満たさず通勤災害として認められません。

就業後に会社の施設内で部活やサークル活動を行うような場合に帰宅中の事故が業務と関連しているかどうかを判断する目安は行政解釈によりおおよそ2時間となっています。なので就業後の部活・サークル活動はなるべく早く切り上げる事が懸命です。

2つ目の要件「住居と職場の移動」ですが様々なパターンが考えられます。例えば出張先のホテルから職場への移動や単身赴任中に一旦実家に帰った時に実家から職場に出勤するような場合です。普段住んでいる家から会社までの移動ではなくても合理性があれば労災として認められます。

3つ目の要件「合理的な経路及び方法」は当然1つとは限りません。道路工事で迂回する場合の経路や、徒歩や自動車や公共交通機関などの利用は合理性があるとして認められます。また通勤途中での日用品の買い出しや幼稚園への送迎なども認められます。

以上のように普段通りの通勤方法は当然認められ、また違う通勤方法を取った場合でもそこに合理的な理由があれば通勤災害として認められる事になります。

労災保険と自賠責保険両方使用する事ができるのか?

通勤中や業務中の交通事故に関して労災保険が使える事がわかりましたね。交通事故では自賠責保険も使えるので両方から補償を受ける事ができたら加入者からしたらかなりお得な話になりますが、残念ながら両方から補償を受ける事はできません。この後説明しますが保障項目が被らない部分に関しては双方に請求でき、保障が被る部分は損害額を限度にして片方に請求し、もう片方の損害額が大きければ超過分をそちらに請求する事になります。

労災保険の場合には通勤中や業務中の事故は第三者行為災害として労災保険を使用する権利が発生します。一方、自賠責保険では民法の不正行為責任に基づく損害賠償請求権が発生します。

2つの権利は全く違うように感じますが、両方とも国が補償する制度なので重複して損害を填補される事がないように支払いの調整として求償と控除が行われます(労災保険法12条の4)。

労災保険の管轄:厚生労働省
自賠責保険の管轄:国土交通省

求償は先に労災保険から被害者に給付された場合に、被害者の加害者に対する損害賠償請求権を給付額を限度として国が取得し加害者に請求する事を言います。つまり労災保険を先に請求した場合には自賠責保険へ請求する権利は国に移る事になるわけです。

控除は先に自賠責保険や任意保険から賠償を受けた場合に、その賠償額を限度に労災保険の給付をしない事を言います。つまり自賠責保険等から先に受けた補償分は労災保険からは受け取れないようになります。また自賠責保険等の補償額が労災保険の給付額を超過している場合には労災保険からは給付されません。

求償と控除の方法

求償と控除は補償額又は給付額の全額で行われるわけではありません。なぜなら労災保険には慰謝料はなく自賠責保険にない特別支給金があり、保険によって補償される項目が違う事があるからです。そのため同一の補償項目・その合計額だけを比較して求償・控除が行われます。

具体例として下記の表を御覧ください。

自動車保険賠償項目賠償額労災保険の給付項目給付額
治療費400,000円療養補償給付600,000円
休業補償1,000,000円休業補償給付600,000円
後遺障害逸失利益1,200,000円傷害補償給付800,000円
合計2,600,000円合計2,000,000円

表の同じ行(例、自動車保険の治療費と労災の療養補償給付)が同一の補償項目となりこれらを比較して求償・控除を考えます。求償の場合は同一補償項目の合計額を比較して低い方の金額が政府の求償額となります。表の場合でいうと2,000,000円が求償額となります。

控除の場合は各同一事由を比較します。表のように休業損害と後遺障害逸失利益は自動車保険の方が多いので労災保険からは一切給付されませんが、治療費は労災の方が多いので差額である200,000円が労災から給付されます。

両方から重複して補償を受ける事ができない事がわかりましたね。

労災保険と自賠責保険どちらを優先すべき?

通勤災害・業務災害となる交通事故に遭った場合には保険を選択する事になるのですが、自賠責保険と労災保険には優先順位というものがあるのでしょうか?厚生労働省は以下のような通達を出しています。

労災保険の給付と自賠責保険の損害賠償額の支払との先後の調整については、給付事務の円滑化をはかるため、原則として自賠責保険の支払を労災保険の給付に先行させるよう取り扱うこと」(昭41.12.16基発1305号)

しかし通達は法令ではないので拘束力はありませんので、労災保険と自賠責保険を自由に選択する事ができます。

では自賠責保険と労災保険はどちらを先に使用するべきかという問題になります。これはケース・バイ・ケースとなりますが、以下のような場合には労災保険から使用したほうがいいかもしれません。

以下以外では自賠責保険の方が補償範囲も広い(慰謝料がある)ですし、仮渡金制度があり速やかに保険金を受け取る事ができるので自賠責保険を先に使用したほうがいいと思われます。また遅延損害金に関しても自賠責保険の方が有利になりますので通常自賠責保険を優先して使用する事になります。

参考「遅延損害金の仕組み上、自賠責保険も後から満額貰ったほうがお得

  • 過失割合が大きい場合
  • 過失割合で争っている場合
  • 相手が自賠責保険のみに加入している場合

過失が大きい場合・過失割合で争っている場合

労災保険は過失相殺がされません。自賠責保険では重過失減額制度があるので70%未満の場合には過失相殺はされません。しかし過失が70%以上ある場合には20%~50%の減額が行われます。過失が大きい場合には労災保険から使った方が得になるかもしれないのです。

自分が加害者になってしまった場合も同様です。加害者の場合は過失割合が大きくなることが多いと思いますので。

また自賠責保険の限度額は傷害で120万円、後遺障害で最大で4,000万円、死亡時は3,000万円となっており、この限度額を超えた分は任意保険に請求することになります。任意保険は重過失減額制度がないので被害者に過失があればきっちり過失相殺され賠償額は減額されてしまいます。

参考「過失相殺とは?自動車事故被害者を悩ませる由々しき過失割合

例えば損害額400万円(労災保険の給付額300万円)の傷害の事故(被害者過失70%)に遭った場合には、労災保険に申請すれば給付額の300万円を受け取る事ができますが、自賠責保険と任意保険に請求した場合400万円×(1-0.7)=120万円が保険金として支払われます。

補償項目毎に比較した場合には受け取れる保険金・給付額はもう少し増えると思いますが、労災保険を先に申請したほうが得になる場合が多いと思います。

この場合に400万円-300万円の残額100万円の過失相殺後の30万円を自動車保険から受け取れると考える人もいるかもしれませんが、そのようにうまくはできていないのです。最高裁の判決では過失相殺後に損益相殺をするとなっており、30万円は受け取る事ができません。

損益相殺とは1つの事故で上記のような2つの保険から補償を受ける場合に二重に保険金を得る事がないように損害額から既に受け取った金額を控除する事を言います。

参考「損益相殺として賠償額から控除するもの・しないもの」

相手が自賠責保険のみに加入している場合

さきほども説明した通り自賠責保険には限度額があり限度額を超過した分は任意保険に請求することになります。そのため相手が自賠責保険のみ加入している場合では限度額内の補償しか受ける事ができません。

さらに自賠責保険では治療費が高額に計算されるため賠償限度額を治療費だけで使い切ってしまうことがあるのです。

治療費の計算方法

点数×報酬単価


自賠責保険は自由診療で報酬単価を自由に決めることができ1点20円~30円時には40円となってきます。労災保険の場合には1点12円で計算しますので治療費の差はかなり大きなものになります。
*通勤時・業務時の交通事故では健康保険(1点10円)は使えません。健康保険は業務外の怪我や病気の際の保険だからです。

自賠責保険を労災保険より先に使ってしまうと、傷害では120万円が限度ですので治療費だけで限度枠を使いきってしまう事があり、休業補償や慰謝料など他の補償が受けれなくなってしまいますので、労災保険で治療費や休業補償の給付を受け、自賠責保険で労災保険にはない慰謝料の補償を受ける方が得になる場合があります。

相手が自賠責保険にも加入していない場合は選択の余地なく労災保険を使用することになります。

労災の補償内容

ここからは労災保険の補償内容について説明していきたいと思います。

■療養(補償)給付
症状が治癒または症状固定するまで療養に必要な給付が受けられます。

■休業(補償)給付
通勤災害の場合には休業4日目から給付され、業務災害の場合には1日目~3日目は事業主が負担します。

給付額は1日につき給付基礎日額の60%と20%相当額の休業特別支給金が給付されます。

給付基礎日額とは

労働基準法の平均賃金に相当する額です。これは事故発生日(賃金締切日がある場合はその日)の以前3ヶ月分の賃金(ボーナスや臨時に支給される賃金は除く)総額を歴日(以前3ヶ月の日数)で割る事によって求めます。

■障害(補償)給付
交通事故によって障害が残った場合には等級によって障害補償給付金が受取れます。
等級が第1級~第7級までの場合には障害年金として給付基礎日額の131日分~313日分、障害特別支給金として159万円~342万円、障害特別年金として算定基礎日額の131日分~313日分が受け取れます。

等級が第8級から第14級の場合には、障害一時金として給付基礎日額の56日分~503日分、障害特別支給金として8万円~65万円、障害特別一時金として算定基礎日額の56日分~503日分が受け取れます。

障害の等級に関しては自賠責保険の後遺障害等級表と同じです。

算定基礎日額とは

給付基礎日額で控除されていたボーナス(3ヶ月を超える期間毎に支払われる賃金)の事故日前1年分(算定基礎年額)を365日で割った額の事です。ボーナスが給付基礎日額の1年分の2割以上となる場合には2割が算定基礎年額となり、その限度額は150万円です。

■遺族(補償)給付
遺族の数に応じて遺族(補償)年金を給付基礎日額の153日分~245日分、遺族の数に関らず遺族特別支給金として一律300万円、遺族特別年金として遺族の数に応じて算定基礎日額の153日分~245日分を受け取れます。

葬祭料として、315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額(合計が給付基礎日額の60日分に満たない時は60日分を給付)

■傷病年金
事故によって受けた傷病が1年6ヶ月を経過しても治癒しない又は症状固定していない場合でかつ傷病等級に該当する場合には等級に応じて給付基礎日額の245日分~313日分の傷病(給付)年金、100万円~114万円の傷病特別支給金、算定基礎日額の245日分~313日分の傷病特別年金を受け取れます。

傷病等級表は1級~3級まであって自賠責保険の後遺障害等級表の1級~3級とほぼ同じ内容となっています。

参考「傷病等級表-厚生労働省

■介護(補償)給付
障害(補償)年金または傷病(補償)年金を受け取っている人で介護が必要な人で、常時介護が必要な人は月額56,600円~104,290円、随時介護が必要な人は月額28,300円~52,150円を介護(補償)給付として受け取れます。

※(補償)となっていますがこれは業務災害の給付の場合の呼び方で、通勤災害でも業務災害でも補償内容は同じです。
(出展:厚生労働省-労災保険給付概要p8以下

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