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交通事故の損害賠償金(逸失利益)を計算する際にライプニッツ係数というものが使われます。
この聞き慣れないライプニッツ係数とはそもそも何なのか?!
ライプニッツ係数とはどういうものなのかについて見てみましょう。
将来もらえるお金を現在の価値に戻す
将来もらえるはずのお金を今現在もらったらいくらになるでしょうか。
例えば、1年後に100万円を受取れる予定だとして、それを今貰ったとします。
今貰っても100万円は100万円だろう!と思うかもしれませんがそれは違います。
本来は、1年後に貰うはずだったものを早く受取ったということは、支払者の立場からすると、【少なくともそれを預金に預け続けた場合は1年間の利息分を受取れたのに受取らずに支払った】、という事になります。
ということは、受取る側がその利息分までもらってしまうと不公平だ!と言えます。
つまり、将来貰うお金を予定より早く受け取る場合には、同じ100万円ではなく、そこから利息分を引いたものが現在の価値ということになります。
以下で見るライプニッツ係数はこの利息分を引くという考えを応用したものです。
ライプニッツ係数とは
将来得られたであろう利益(逸失利益)を現時点の金額に換算するために必要な計算の仕方(実務では「中間利息の控除」という言い方をします)には二種類の方法があります。
- ホフマン方式
- ライプニッツ方式
以前は両方の方式が使われていたのですが、平成11年に三庁共同提言というものがされ、それ以降はライプニッツ係数に統一されています。
そこで以下ではライプニッツ係数の説明をしていきます。
ライプニッツ係数は16世紀のドイツ数学者であるゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツに因んで名付けられたものです。
ある一定の年額の金銭(X円)をある時点からY年間にわたって継続的に得られると仮定した場合に、それをある時点で一時金としてもらうことになったときに換算するために使う係数のことをライプニッツ係数といいます。
具体的には交通事故などによる損害賠償責任を問うときに、今後被害者が必要となる長期の介護費用や事故がなければ得られていたであろう将来の給料などによる逸失利益の計算などに使用されます。
ライプニッツ係数の算出
少し複雑ですが、このライプニッツ係数の算出の仕方を見てみましょう。
毎年末に1円を受け取る複利の年金現価は下の計算式の様にして表す事が出来ます。
利率=i、年数=n として
Wikipwdia
この計算式を元に利率を5%とし、期間を3年の場合のライプニッツ係数を計算すると、
0.9523+0.9070+0.8638=2.7223となります。
計算例
では、具体的にはどのようにライプニッツ係数は使われるでしょうか、計算例でみてみましょう。
計算自体は簡単で以下の様にして一時金を求める事になります。
将来の一年毎の収入金額×ライプニッツ係数
上記の算出例を前提に毎年100万円を3年間もらえるとして、それを今もらうとした場合の現在の価値を計算すると以下の様になります。
100万円×2.7223=2,722,300円
交通事故時の実務で使う事となるライプニッツ係数は、国土交通省のHPで紹介されているので以下を参照にしてください。
死亡の場合は「平均余命年数とライプニッツ係数表」
後遺障害の場合は「就労可能年数とライプニッツ係数表」
中間利息の控除率は何%?
ところで、上記の計算で特に説明をせずに利息を5%として計算しました。
従来から中間利息の控除率には5%を利用するのが一般的です。
なぜなら民法404条の法定利率として5%が設定されているからです。
しかし近年は金利がとても低く、それでもなお5%を採用するのはおかしいのではないか?という議論が起きていました。
判例でも5%は高すぎるとして2〜4%を採用する判決もでていましたが、平成17年の最高裁で中間利息は法定利率によるべきだという結論が出されたので、現在では一貫して5%で計算することになっています。
イギリスやアメリカでも損害賠償を一時金で支払うときの計算には年金現価が使用されますが、ライプニッツ係数は一般に使われていません。
計算にどの利率を使うかによって被害者が受け取る金額が大きく変わってしまうので判断が難しいからです。
そこでイギリスやアメリカでは、長期に発生する損害賠償の場合は原則として定期金賠償(年金の様に毎年1回ずつ払う方法)を用いることになっています。
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