この記事を読むのに必要な時間は約 18 分です。
「事故も起こしていない!契約内容も変更していない!それなのに自動車保険の保険料が高くなった・・・。」
「去年までは毎年更新する度に保険料が下がっていたのになぜ?」
という疑問を抱いている人も多いのではないでしょうか?
自動車保険には、無事故で過ごせば翌年の割引率が高くなる「ノンフリート等級制度」が採用されています。
にもかかわらず、保険料が上がってしまう現象がたまに発生します。
自分自身にこの現象が発生したらなかなか納得できませんよね。
そこで今回は、無事故で契約内容も変更していないのに保険料が高くなる理由、そしてその際の対処法について紹介したいと思います。
まずは、友人の「更新時に自動車保険が高くなった」エピソードを紹介します。
おそらく、多くの人がこんな体験をしているのでは?
【エピソード】更新時に自動車保険が高くなった!!契約内容も同じ!
今年の春頃の話です。
自動車保険が2ヶ月後に満期を迎えるというお知らせが契約している保険会社から届いたのですが、まだ満期まで2ヶ月もあるのでほったらかしにしていたようです。
そしてある日、雑多に積み上げられた手紙や新聞、書類の中から1枚の紙がヒラリと床に落ちたのに気付き、拾い上げて見てみると、それは「自動車保険の更新の案内のお知らせ」。
すっかり更新の事を忘れていた友人は、もうすぐ満期日を迎えてしまうので保険内容の見直しを後回しにして、今回と同じ内容で契約する事にしました。
今まで無事故で過ごしてきたので、なんら契約内容に不満も無かった事も後押ししたのでしょう。
仕事を早く終わらせ自動車保険の更新をするために最寄りの保険代理店に行き、サクッと今回と同じ内容で更新手続きをしようとした友人に保険料の試算を終えた代理店店員から驚きの一言が返ってきたのです。
「前回と同じ内容で試算した結果、3,000円高くなって83,000円となります。」
なんで保険料金が高くなっているんだ?と思った友人は「等級の入力間違いはありませんか?」と確認したところ、間違っていないという返答。
コレでは拉致があかないと思った友人は、ストレートに「なぜ前回と同じ契約内容なのに保険料金が高くなるんですか?」と質問したそうです。
代理店店員の回答は「毎年無事故で過ごしている人は”等級”や”運転者年齢条件特約”などによって保険料金が安くなるのが通常ですが、お客様の乗っている車両によっては高くなる事もあります。」
という話だったそうです。
友人はもうすぐ満期を迎えるということもあり、とりあえず同じ内容で更新手続きをし、保険料の見直しは後日する事にして代理店を後にしました。
友人のエピソードはこれで終わりますが、無事故なのに保険料が上がってしまうという現象が起きた話でした。
話の中にも出てきたように、保険料が高くなった理由は「乗っている車両」つまり「車両料率クラス」の事を指しています。
また、保険代理店の説明不足か友人のド忘れかは分かりませんが、その他にも高くなる理由があります。
次のセクションで、無事故でも保険料が上がってしまう理由を見ていきましょう。
保険料が高くなる5つの理由
無事故で契約内容も変更していないのに保険料が高くなる理由は、以下の5つが考えられます(消費税は将来的な話です)。
- 車両料率クラスの見直し
- 保険料の値上げ
- 割引制度の適用外・縮小
- 記名被保険者年齢別料率の影響
- 消費税の増税
車両料率クラスの見直し
車両料率クラスの特徴を簡単にまとめると以下のようになります。
- 保険料金を算定する基準
- クラスが1~9まであり、数字が大きい方が保険料は高くなる
- 型式毎に決められている
- 保険の種類毎に決められている(例:対人保険毎、車両保険毎という意味)
- 過去の保険金の支払いや事故件数などを参考に決められている
- 毎年見直しが行われる
つまり、自分と同じ型式の車両の事故件数や保険金支払額が多い場合には、毎年の見直しの際に料率クラスの数字が大きくなり、たとえ自分が無事故でも保険料金が高くなってしまうのです。
残念ながら、車両料率クラス変更による保険料の値上がりは、自分ではコントロールのしようがありません。
我慢するしかないと思います。
「自分が乗っている車両は事故が多い!」という事を念頭において安全運転する事くらいしか対処のしようがありませんね・・・。
強いて言うなら、車両を買い替えれば保険料を安くすることが出来るかもしれませんね。
保険料の値上げ
「高齢者の事故率の上昇による保険金支払いの増加」や「若者の車離れによる保険料収入の減少」などにより、毎年同じ保険料しか徴収していない場合、保険会社の経営が苦しくなってしまいます。
こうした状況を乗り切る為に「保険料の値上げ」が行われます。
そのため、契約者個人に保険料が高くなる原因が無くても、保険料のベース自体が高くなっているので、更新時に保険料が高くなってしまう事があります。
割引制度の適用外・縮小
自動車保険には多くの割引制度が有り、なるべく多くの割引を受けた方が当然保険料が安くなります。
逆に言えば、今まで適用されていた割引が適用されなくなれば、その分保険料が高くなってしまいます。
割引制度の中には、契約内容を変更していなくても時の経過(車の年式や契約年数など)によって、割引の対象外になるものがあります。
新車割引が典型的な例です。
新車割引とは、初度登録年月から一定期間割引を受けられる制度です。
割引率は概ね5%~10%となっていて、新車に乗る人なら大きな恩恵を受けられます。
しかし、新車割引を受けられるのは25ヶ月となっている場合が多く、当然その期間が経過すれば、割引は適用されません。
また、割引制度が縮小される例としては「インターネット割引」が挙げられます。
インターネット割引とは、ネットを利用して自動車保険の見積・申込をする事によって、10,000円などの大きな割引を受けられる制度です。
しかし、保険会社によっては大きな割引を受けられるのは1年目だけで、2年目以降は割引額がガクッと下がってしまうところが有ります。
たとえば、ソニー損保では1年目は1万円の割引を受けられますが、2年目以降は2,000円しか割引を受けられません。
差額はなんと8,000円。
更新時に保険料が高くなる大きな要因と言えますね。
記名被保険者年齢別料率の影響
記名被保険者年齢別料率とは、記名被保険者の年齢(年代)に応じた保険料を算出する制度です。「年齢条件」とはまた違う制度です。
この制度では、基本的に「20代以下⇒30代⇒40代」と保険料が安くなっていき、50代からは「50代⇒60代⇒70代以降」と保険料が高くなっていきます。
同じ年代では保険料が変わる事はありませんが、1つ上の年代になった時にその他が同じ条件でも保険料が高くなってしまいます。
消費税の増税
2019年10月に消費税が8%から10%に増税される予定です。
将来の話なのでここでは簡単に済ませますが、確実に保険料が2%高くなります。
2019年10月以降に更新する場合は、消費税の影響も考慮するようにしてくださいね。
【まとめ】上がった保険料を安くするには?毎年自動車保険の見直し・比較を~
今回は「無事故で契約内容を変更していないのに自動車保険が高くなる理由」について紹介しました。
社会又は契約者全体の影響を受けて保険料が高くなってしまう理由が多く、対策を立てるのは難しそうですが、「割引制度の適用外・縮小」については活路を見出せそうです。
たとえば、保険会社を乗り換えて、新規契約でのインターネット割引を受ける、など。
インターネット割引を受けていない人でも利用できる対策方法ですよね。
また、同じ補償内容でも自動車保険によって計算される保険料が異なるので、多くの自動車保険を比較して、なるべく安い保険を見つけるのも1つの方法です。
それと同時に補償内容の見直しも行ってくださいね。
最後に、保険料を月払い(分割払い)している人は年払い(一括払い)に変更する事で約5%の保険料を節約する事ができます。もし月払いをしているのであれば、年払いへの変更も検討してみましょう。
専門家(FP・損保プランナー)からのコメント
菊地 季美子(Kimiko Kikuchi)
生命保険会社2社に合計8年の在籍後、損害保険へ転向。3年の営業店事務経験ののち損害保険代理店に転職、自動車保険・火災保険の設計を担当し、相談件数は在籍3年で800件を超える。現在はフリーランスでFP資格試験の講師、セミナー、執筆活動を行っている。
<保有資格> FP技能士3級・2級、日本FP協会認定AFP、トータルライフコンサルタント、損害保険プランナー
<コメント>
自動車保険や火災保険は物にかける損害保険ですので物価や消費税の影響を受けやすく、保険料は上昇傾向にあります。
自動車保険の値上がり理由としては他にも、新車割引と同様に期間限定のASV割引が外れてしまうことや、団体扱いで加入している場合における団体割引率の低下、複数所有している自動車を同じ保険期間で契約するミニフリート割引が、所有台数を減らすことにより割引率が低下すること等が挙げられます。
保険料を占める割合は車両保険の部分が大きいので、購入から4年以上経ち新車割引が外れる頃になったら補償の見直しの時期です。運転に慣れてきたら一般条件からエコノミーに変更する、免責金額を上げる等で調整しましょう。
対人や対物といった賠償に関する補償は保険の本質部分ですから、保険金額は無制限をおすすめします。
中村 傑 (Suguru Nakamura)
大垣共立銀行を退職後、東京海上日動火災保険に代理店研修生として入社。研修期間を経て、2015年に独立開業。2020年に株式会社として法人成り、現在に至る。家業が自動車販売業であり事業承継者でもある。車と保険の両方の業務を兼務しており、専門領域が広い事が強み。
コメント
この記事について現場目線で補足させて頂きます。
大手保険会社は自動車保険の改定を1年に1回の頻度で行っており、改定以降の保険料に関しては、多くのご契約で保険料が値上げしております。値上げしているご契約の中で代表的な契約は、新車から5年前後且つ先進安全装備搭載車両である軽自動車・普通乗用車、電気自動車であり、対照的に、平成初期の車の様に古い車については、大幅な値上げとなっていない事が多いです。
こうした保険料の動向を踏まえると、実際に事故で自車に損害が発生した際の修理金額を勘案して保険料水準を決めていると考えられます。先進安全装置搭載車は、非搭載の車と比べて、レーダー、ソナー、カメラ等の装備が設置されており、それらの交換作業後には、各種点検作業が必要になる為、非搭載の車と比べると明らかに修理金額は膨らみます。
また、電気自動車については改定後の保険料が著しく値上げとなっており、現在20等級で等級ダウンしていないにも関わらず同条件で更新頂いた場合、1万円以上値上げとなった契約もありました。
電気自動車というのは、構造上、車体の底部にバッテリーを搭載しています。バッテリーは一体構造で分解不可の構造の為、少しでもバッテリーに損傷が生じると全交換となり、修理金額が過大になる為、このような保険料水準になっていると考えられます。
コメント
関連記事をチェックする