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交通事故において過失割合が「0対100(ゼロヒャク)」になることはあまり有りません。
交通事故を起こした以上、どちらにも多少の過失が有ったとみなされるからです。
ゼロヒャクになる代表的な例としては以下の様なケースが挙げられます。
- 信号待ちで追突されたケース
- 相手の赤信号無視
見ての通り結構限定的ですね。
仮に被害者側の過失が100だと判定されれば、賠償金を一切貰えなくなってしまう可能性が有ります。
今回は、保険金を支払いたくないからといって、被害者側の「赤信号無視」が事故の原因、よって過失割合は「0対100」だと主張してきた損保会社との争いについて見ていきます。
具体的な事例
①Sさんは当時18歳。
国道を原付きバイクで走行中に右折してきた車と衝突。
②事故の結果、外傷性くも膜下出血・顔面骨折・両肺挫傷など極めて酷い怪我を負った結果、寝たきりの「遷延性意識障害者(植物人間)」となってしまった。
③加害者側損保会社は「バイク赤信号無視・右折車信号青」の場合の判例集を持ち込み、過失割合「0対100」を主張。
④Sさんが赤信号を無視していたという事実は「警察の調べと加害者の証言」から判断したと損保会社は主張していた。
⑤結果として、裁判ではSさん家族の訴えが一部認められて、Sさんの過失割合は6割まで下げられました。
この裁判例のひどい点は、Sさんが植物人間となってしまい証言できない事を良いことに、損保会社が「事故の原因はSさんの赤信号無視が原因である。
だから保険金は一切払う必要はない!」と主張した点です。
普通、過失割合を決定する際には「修正要素」というものが絡んできます。
例えば「右折するときにウィンカーを点灯していなかったので過失割合を上乗せ」とか「右折するときに充分な減速をしなかったので過失割合を上乗せ」という感じで使います。
この「修正要素」を決定する際には、事故当事者の証言もかなり重要な要素になってきます。
自分はちゃんと「一時停止していた」「ウィンカーも出していた」とか言えれば、過失割合を自分に有利に働かせる事も出来ます。
(もちろん、自分側に過失が有ったなら認めないといけませんが。)
しかし、今回の場合Sさんは意識不明なわけですから、一切の証言を出来ません。
そこへもって、損保会社は自分たちだけの主張を押し通すわけですから、家族としてはたまったものでは有りません。
しかも事故から3年半後に開示された捜査資料には「Sさんが赤信号を無視した」という客観的な裏付けが一切書かれていなかったのです。
もし、Sさん家族がが「すんなりと損保会社側の主張を受け入れて示談書に判子を押していたら・・・。裁判が長引いていなかったら・・・。」
と考えるとゾッとしますね。
今回の例では、結果として過失割合が6割まで引き下げられた事が唯一の救いでした。
赤信号無視という客観的な裏付けがない以上、Sさんに過失割合が6割有るというのは少し厳しめの判決では有りますが、それでも損保会社の主張はほとんど否決されたのです。
損保会社の主張を鵜呑みにしていると、被害者側が痛い目を見るという典型的な例だと思います。
専門家からのコメント
中村 傑 (Suguru Nakamura)
大垣共立銀行を退職後、東京海上日動火災保険に代理店研修生として入社。研修期間を経て、2015年に独立開業。2020年に株式会社として法人成り、現在に至る。家業が自動車販売業であり事業承継者でもある。車と保険の両方の業務を兼務しており、専門領域が広い事が強み。
コメント
記事のケースは少し極端ですが、ドライブレコーダーや事故現場付近の防犯カメラによる映像記録、目撃者等の存在がなければ、信号の色を争点にした事故というのは揉める事が非常に多いのは事実です。
どちらか一方が嘘の証言をしたとしても、それを否定するだけの明確な根拠が無い為に、「いったもん勝ち」に近い状況でもあります。
国道の交差点、交差点沿いのガソリンスタンド、コンビニエンスストアには防犯カメラが設置されており、奇跡的に事故時の映像が映っている事もあり、保険代理店として開示をお願いする事もありますが、警察ではないので開示頂けない事もあります。
やはり自分の身を守るにはドライブレコーダーは必須だと考えます。
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