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自動車保険の業界では「アジャスター」と呼ばれる方が頻繁に登場します。
このアジャスターとは一体何者なのでしょうか?どんな事をやっている人なのでしょうか?
今回の記事では「アジャスター」について解説していきます。
アジャスターとは?
アジャスターは、「日本損害保険協会」に加盟している損害保険会社からの依頼を受けて、「損害調査業務」を行う人のことをいいます。
また、ここでいう「損害調査業務」は、自動車による物損事故が起きた場合の事故原因や事故の状況の調査、事故によって発生する損害の額などを調査する事を言います。
損害調査業務を行うアジャスターには、以下の2種類のタイプがいます。
- ①専属アジャスター
- ②乗合アジャスター
①専属アジャスター
専属アジャスターは、損害保険調査会社の様な特定の会社に雇用されて、アジャスターとして活躍する方のことをいいます。
損害保険会社に雇用されて、保険会社内でアジャスターとして業務をすることもあります。
お医者さんでも損害保険会社と雇用契約をしている人もいますので、そういう人と同じ感じですね。
②乗合アジャスター
乗合アジャスターは、専属アジャスターと違って特定の会社に雇用されるのではなく、フリーランスとして個人的に業務を請け負う方のことをいいます。
フリーライターと同じようなものと考えると分かりやすいです。
乗合アジャスターは一般的に損害に関する調査業務のみを請け負うことになりますが、専属アジャスターは保険会社や損害保険調査会社の従業員として様々な業務をこなす必要があります。
例えば、事故の過失割合の調査から示談の手助けといったことまで幅広く担当することになります。
以上の説明から分かる様に、アジャスターは「保険屋さん」というよりは「事故調査のプロフェッショナル」ということになりますね。
アジャスターになるには?~5段階の資格~
アジャスターを名乗るには、日本損害保険協会にアジャスターとして登録をする必要があります。
申請をすれば誰でもすぐにアジャスターとして登録できるという訳ではなく、試験や研修をクリアする必要があります。
また、アジャスターの登録は種類・ランクが分かれており、それぞれの種類・ランク別に行われることになります。
種類としては大きく分けて「技術アジャスター」と「特殊車アジャスター」の2つがあります。
以下個別に詳しく見てみましょう。
技術アジャスター
「技術アジャスター」は、普通乗用車などの一般的な自動車の保険事故が発生したときに、損害を受けた車両の損害額や事故の原因・状況を調査する人に必要な資格で以下の様にランクが分かれています。
- 見習技術アジャスター
- 技術アジャスター初級技能ランク
- 技術アジャスター3級技能ランク
- 技術アジャスター2級技能ランク
- 技術アジャスター1級技能ランク
見習技術アジャスターは特に受験の為の要件はなく、基本的に誰でも受けることが出来ます。
初級・3級・2級についてはそれぞれ下位のランクを取得していることが受験要件となっています。
従って、ランクを飛ばして受験するといったことは出来ません。
また、合格したらすぐに次のランクを受験出来るか?というと、そういう訳でもなく、ランクに応じて下位のランクの登録後4ヶ月〜3年の間隔をあけないと受験できません。
ちなみに、見習技術アジャスターの試験で出題される問題のレベルは、「3級自動車整備士資格試験」及び「自動車車体整備士資格試験」程度とされています。
2016年度の合格率は平均27%。
資格の入り口としては、高いハードル設定になっていますね。
それだけしっかりと試験勉強をしないとダメ!という事なのでしょう。
なお、「技術アジャスター1級技能ランク」は資格として用意されているのですが、現在のところ試験が実施されていません。
従って、暫定で2級が最上位のランクということになります。
特殊車アジャスター
特殊車アジャスターは、建設機械などの様に特殊な構造や用途の自動車が起こした事故の調査をする為の資格です。
対象の自動車が違うだけで、実際の業務内容は技術アジャスターと変わりません。
【交渉で揉める事も】アジャスターの査定額は低くなりがち
前述したように、アジャスターは業務の1つとして事故の損害額を調査します。
事故車両を実際に見て修理費用を見積もる事もあれば、画像だけで見積もる事もあります。
その業務の一環として、ディーラー等の修理工場が出した修理費用の見積の査定も行います。
その金額がアジャスター本人が見積もった金額と比較して妥当なものなのか、という事をチェックするんですね。
そして、両者の金額に開きがあれば、修理費用の交渉をアジャスター・修理工場間で行います。
ただ、この時の交渉で揉める事が多いんです。
というのも、アジャスターと修理工場の修理費用の見積金額に大きな差が発生する事が多いからです。
専属アジャスターにしろ、乗合アジャスターにしろ、どちらも保険会社側の立場で業務をこなします。
そのため、基本的に支払う保険金が少なくなるように、損害額の見積・査定が行われます。
不要だと判断した修理費用は認めません。
一方、修理工場は損傷した箇所の修復から塗装まで、ほぼ完全に元通りになるような修理を心がけます。
なぜなら、修理箇所・工程・質を高めるほど、自社の利益に繋がるからです。必然的に、修理費用の見積金額は大きくなります。
この差額については、両者で話し合いが行われ、修理費用の協定が結ばれます。
交渉事ですから、基本的に修理工場が提示した金額よりも少なくなるでしょう。
車の所有者としては、完璧に修理して欲しいですよね。
しかし、専門的な知識の無い人が、両者の間に入っても話は前に進みません。
そのため、加入している保険会社に相談するか、弁護士費用特約を用いて弁護士に相談してみましょう。
弁護士費用特約は物損事故でも利用可能です。
まとめ
アジャスターは、英語では「損害査定人」という意味があり、保険会社の損害調査や示談交渉などの業務を行う人の事です。
保険会社に勤めていればアジャスターになれるわけでなく、試験・研修を経て、資格を取得する必要があります。
自動車保険の事だけでなく、車・法律など幅広い知識・専門性が求められる職業なんですね。
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