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この法律を初めて見る方もおられるのではないでしょうか?この自動車運転死傷行為処罰法は2014年5月20日に施行された比較的新しい法律で、法律名からもわかるように交通事故に関する処罰を規定した法律です。
以前は人身事故に対する処罰は刑法に規定されていた自動車運転過失致死傷罪又は危険運転致死傷罪が適用されていましたが、この2つの罰則を刑法から抜き出して新法として制定しました。
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■なぜこのように新法を制定したのか?
今までの刑法では重大な事故に対して危険運転致死傷罪を適用する事が困難だった為です。
どういう事かというと、危険運転致死傷罪を適用するには「正常な運転が困難であった事」を立証する必要があるのですが、この立証が非常に難しかったため悪質な運転の事故であっても危険運転致死傷罪が適用されない事が多かったのです。
明らかに悪質な運転での事故であるのに危険運転致死傷罪が適用されなかったケースの例は以下事故です。
- 2012年4月23日京都府亀岡市での無免許運転の少年が児童の列に突っ込み10人が死傷した事故
- 2011年4月18日栃木県鹿沼市でのてんかん(症状を隠して免許を取得)の発作により児童の列に突っ込み6人が死亡した事故 等
これらの事故は頻繁にニュースにも取り上げられていたので記憶にも新しいと思います。
このような悲惨な事故であっても運転手に与えられた刑罰は自動車運転過失致死傷罪(旧刑法)でした。
こういった事故と刑法の問題が浮き彫りになり、新法が設立されたのです。
では主にどのような変更点があったのか見てみましょう。
■従前からの変更点
- 危険運転致死傷罪の適用要件を従来の「正常な運転が困難である事(最高刑懲役20年)」と新たに適用要件を緩和した「正常な運転に支障が生じるおそれがある事(最高刑懲役15年)」を新設
- 発覚免脱罪(最高刑懲役12年)-飲酒運転や薬物使用の発覚を逃れる為に逃走した罪を新設
- 無免許運転の場合に刑罰を加重する事を新設 等
新法の設立により危険運転致死傷罪の適用の範囲が拡がり悪質な運転者への罰則が強化されました。
しかし新たにできた自動車運転死傷行為処罰法にも課題はあります。
■自動車運転死傷行為処罰法の課題点
- 適用要件が緩和されたとはいえ、その内容は曖昧である事
- 無免許運転の刑罰の加重は新設されたが、危険運転致死傷罪の適用は困難なままである事 等
危険運転致死傷罪の適用要件である「正常な運転が困難である事」と「正常な運転に支障が生じるおそれがある事」とはどういた状態を指すのか、また両者はどのように違うのかがわかりにくいといった課題があります。
そして危険運転致死傷罪の適用要件には「運転技能を有しない」もありますが、京都府亀岡市の無免許運転の事故では、繰り返し無免許で運転をしていた少年は運転技能があったとされ、危険運転致死傷罪の適用は見送られたのですが、新法においてもこの課題はそのままなのです。
法律は完璧ではありません。
今後も必要な見直しがされていくと思いますが、やはり悪質な事故をなくすためには運転者一人一人が安全運転を心がける事が必要になってきます。
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