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自動車保険の保険金を受け取る際に、色々な書類を保険会社に提出する必要が有りますよね。
例えば、交通事故証明書とか治療費の領収書とか数え上げればキリが有りません。
せっかく保険に入っているのだから、面倒な手続き無しでスッと払ってよ!と思う気持ちも分かりますが、そんなに簡単に物事は進みません。
なぜなら、保険金を支払うために必要な書類が揃っていないのに保険金を支払ってしまうと保険会社も怒られるからです。
金融庁が保険会社を検査して監視している
金融庁は国内にある保険会社の監督官庁であり、定期的に保険会社の業務が適切に行われているかを確認しています。
確認の内容は多岐に渡り、「保険金支払額に過不足は無いか?とか、支払い先が不明の保険金は無いか?とか、保険金を支払うために必要な書類は揃っているか」などが調査されます。
金融庁から派遣された検査員の調査によって、支払保険金の過不足が判明した場合には、保険請求者に追加で保険金が支払われたり、一度支払った保険金を回収せよ!という命令が下されたりもします。
従って保険会社としても「この事例でこの保険金額は適切です。
どうぞ証拠としてこれらの書類を見て下さい!」と胸を張って言えるように書類を整備しておかなければなりません。
このように保険会社にも保険会社の事情が有りますので、面倒でも書類は不備なく・遅滞なく提出しましょう。
保険会社にとっても、素直に書類をすぐに提出してくれる人の方が嬉しい訳ですから、ちゃんと言われた通りに嫌な顔をせずに書類を提出したほうが御利益が有ると思いませんか?
また、現在の保険制度の元では保険金を請求する側に「被害額の立証責任」が有ります。
つまり、保険金を最大限受け取りたいと思ったら「病院の医療費・壊れた車の修理費用の領収書や見積書や被害状況を証明する写真」などの証拠を余すところ無く保険会社に提出する必要が有ります。
それが揃っていなければ、払いたくても保険金を払ってくれない事は、今までの説明でお分かりでしょう。
不払いで業務改善命令が出される事も有る
以前、保険金不払い事件が多発した時には、金融庁の検査が入って、多くの保険会社に業務改善命令が出されました。
詳細は「保険金不払いの闇」を読んで頂ければと思います。
保険会社があまりにもおかしな事をやっている場合には「金融庁」がしっかりと検査してくれるという事は、自動車保険加入者としては嬉しい限りですね。
コラム-銀行でも同じような検査が有る
保険会社と同様に、銀行の監督官庁も金融庁です。
特に銀行で検査対象になるのが、貸付金(債権)の回収可能性です。
銀行は企業にお金を貸して、その貸付金の利息を回収することで収益を上げています。
でも、お金を貸した企業が倒産してしまえば、利息は元より貸付元本もパーになり、貸付金額が多ければ多いほど銀行の損失は大きくなります。
そこで銀行は「貸付先毎に貸したお金はちゃんと返ってくる見込みが有るか否か」を毎期定期的にチェックします。
これを「自己査定」と言いますね。
もし、仮に返ってくる見込みが少ないと判断すれば、企業が倒産する前に貸倒引当金などを設定して、実際に倒産するよりも前に自分の銀行の財務諸表に反映させます。
金融庁は、銀行の貸倒引当金の設定が適切か否かを検査して、不足が有れば更に損失を計上するように指摘したりします。
金融庁の鶴の一声で業績が大幅に変わる事も有りますので、銀行にとって金融庁は恐くもあり面倒な組織でも有るのです。
注:コラムの自己査定はかなり簡単に書いていますが、実際にはもっと複雑です。
専門家からのコメント
中村 傑 (Suguru Nakamura)
大垣共立銀行を退職後、東京海上日動火災保険に代理店研修生として入社。研修期間を経て、2015年に独立開業。2020年に株式会社として法人成り、現在に至る。家業が自動車販売業であり事業承継者でもある。車と保険の両方の業務を兼務しており、専門領域が広い事が強み。
こちらの記事を実務面から、補足させて頂きます。
昨今、保険会社の個人情報の漏洩や、ビッグモーターによる保険金不正請求事案により、金融庁による保険会社への監視監督は強化されていると思います。ビッグモーターの問題が発覚する以前に、保険業法が改正され、これまで立ち入り検査の対象は保険会社のみでしたが、保険代理店まで拡大されました。
ビッグモーター以外でも、マネードクター、ガリバー、グッドスピードらの保険代理店へも金融庁による立ち入り検査が実施され、顧客意向に沿った保険の提案、販売がされているか検査されるようになってきました。
じゃあ、これが一般の方にどのように関係してくるかを以下の通り実例を交えて、お伝えします。
①満期日前に自動車保険を解約し、再契約を強制されるケース
これは過去に実際にあった事ですが、満期まで後1~2週間の自動車保険を解約し、納車日で他社損保様にて再契約されるケースがありました。このケースであれば、あと1~2週間待てば1等級アップしますが、満期日前に解約する為に等級が進行する事はなくデメリットしかありません。お客様にも「せめて満期日まで待ってから解約しては」とお伝えしましたが、「決まった事なので」と頑なに拒否されてしまいました。
②既契約の生命保険を解約し、別の商品を再契約するケース
これは生命保険を見直す場面で良くある事だと思いますが、解約のタイミングには注意を要します。生命保険には健康状態の告知があり、告知内容を元に生命保険会社による審査があります。告知項目が何もなければ問題ありませんが、何らかの告知項目がある場合、申込が延期(否決)となる事もあります。
生命保険を見直す際に、解約を先行してしまうと、再契約の生命保険が告知により契約できない可能性があることを予め知っておく必要があります。
また、保障内容にどのように違いがあるのかを十分に把握する事も重要です。
①②の様なケースで、保険代理店から契約を強制されるような事があれば、顧客意向に沿った対応とは言えませんので、そうした代理店では契約されない事をオススメします。
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