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皆様もニュースや新聞等でよく飲酒運転事故で検挙されたという報道を見かけることが多いかと思います。
何年経っても減らない飲酒運転。
今回は、飲酒運転の定義とは何なのか、それに対する罰則や実際事故が発生している推移と飲酒運転事故を起こした際の自動車保険はどうなるのかということを解説していきます。
酒気帯び運転の定義
酒気帯び運転とは、文字の如く、お酒(アルコール)を飲んだ状態で運転してしまうことを言いますが、法律で定められた定義があります。
飲酒検問等で使用するアルコール検知機に息を吐いた呼気に1リットル中のアルコールの濃度が0.15mg以上検知されると酒気帯び運転として扱われます。
飲酒運転では個人の体質や感覚は適用されません。
自分はアルコールに強いから運転出来ないほど酔っていないという主張も勿論通用しないのです。
また、二日酔いにも注意が必要です。
昨晩飲んだとしても量や個人差で体内からアルコールが排出されるまでに時間がかかります。
例え、翌朝の運転であっても検問時に0.15mℓ以上のアルコール濃度が超えていれば検挙の対象となりますので、朝に運転する際は前の晩に遅くまでアルコールを飲み過ぎないように注意しましょう。
酒酔い運転とは?
以上が酒気帯び運転の定義となりますが、飲酒運転には「酒酔い運転」というものもあります。
これは、アルコールによって真っ直ぐ歩くことができない。正常に運転できない恐れがある状態のことです。
この場合、客観的に見たときに正常でなければ、濃度に関わらず検挙の対象となります。
酒気帯び運転の罰則について
当然ながら飲酒運転を行なうことで罰則があることは皆様もご存知かと思います。
結論から言うと、アルコール濃度が基準値を超えると罰則の対象となります。
罰則の重さにも様々なケースがありますので、具体的に見ていきましょう。
◾︎飲酒運転をした場合の罰則
酒気帯び運転をした場合の罰則は、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」となります。
違反点数は、アルコールの呼気量により変わります。
呼気量が0.25mℓ以上の場合は25点加点されるので、即免許は取り消しとなり2年間は免許取得ができなくなります。
呼気量が0.15mℓ~0.25mℓの場合は13点加点されるので、90日間の免許停止となります。
しかし前歴があれば、免許取り消しとなります。
呼気量が0.15mℓ以下の場合は、注意だけで罰則等、ペナルティはありませんが、客観的に観て明らかに酔っていると判断された場合は、酒酔い運転として検挙されてしまいます。
更に酒酔い運転の場合は、酒気帯び運転よりも罰則が重く、「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」となり、当然ながら即免許取得となり、3年間は免許取得ができなくなるので、注意が必要です。
◾︎飲酒運転事故を起こした場合の罰則
実際に飲酒運転を行なった上に事故を起こしてしまったケースも見ていきましょう。
まずは、自動車運転過失運転致死傷罪というケースです。これは、ニュースでもよく耳にするワードかと思います。
飲酒運転が原因の事故により、人を死傷させてしまった場合のことを指します。この場合の罰則は、「7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金」となります。
また、危険運転致死傷罪というケースもあります。アルコールの影響で酷く酔った状態で運転した場合、言わずとも相当危険な状態での運転となります。
人を死傷させてしまった場合の罰則は、「15年以下の懲役」
人を死亡させてしまった場合の罰則は、「1年以上の有期20年以下の懲役」
となります。
更にひき逃げの場合は、通常では「10年以下の懲役または100万円以下」の罰則となりますが、飲酒ひき逃げの場合は「最高で15年以下の懲役」となります。
勿論、事故の罰則とは別に違反点数も加点されるので免許取り消しは免れません。
酒気帯び運転事故の推移や特徴
警察庁が発表した資料を参考に事故件数の推移を見ていきましょう。
■飲酒運転事故件数
- 2008年度・・・6219件
- 2009年度・・・5726件
- 2010年度・・・5561件
- 2011年度・・・5030件
- 2012年度・・・4605件
- 2013年度・・・4334件
- 2014年度・・・4155件
- 2015年度・・・3864件
- 2016年度・・・3757件
- 2017年度・・・3582件
- 2018年度・・・3355件
- 2019年度・・・3047件
(酒酔い・基準値以下含む、原付以上の運転者が対象)出典:警察庁資料(飲酒運転による交通事故件数の推移)より
と見ての通り、年々数百件単位で減少しており、2008年度から半数近くまで減少していることが分かりますが、現在に至っても年間で数千件もの飲酒運転事故が発生していることが現状です。
飲酒運転による死亡事故件数
飲酒運転による死亡事故は2000年がピークであり、1276件も発生していました。その翌年2001年に「危険運転致死傷罪」が新設され、更に翌年2002年には「改正道路交通法」の施工による厳罰化と罰則適用対象の見直しが行なわれ、1000件へ減少しました。
その後、2007年には改めて、「改正道路交通法」が施工。飲酒運転とそれを助長する行為の更なる厳罰化。その結果、改正の翌年2008年では、305件と前年に比べて、100件以上減少しました。
しかし、そこからは横ばいの状態が続きながら緩やかに減少していき、近年2019年では、176件でした。
減少はしているもののゼロにならないというのが現状です。
自動車保険の適用可否について
それでは、飲酒運転による事故を起こした場合、自動車保険の適用はどのようになるのでしょうか。
■飲酒事故の加害者の自動車保険
飲酒運転事故を起こした加害者は通常の事故とは異なり、適用できる保険(任意保険の項目)が免責事由によって制限されてしまいます。
運転する上で加入必須である自賠責保険については適用可能。
制限されるのは任意保険となりますが、任意保険は主に
・対人・対物保険
人や物に損害を与えてしまった際に補償される保険
・人身傷害保険
記名被保険者またその家族が契約中の車また他の車に搭乗中や歩行中などに自動車事故で死傷した場合に補償される保険
・搭乗者障害保険
契約中の車に搭乗中の全員に死亡・後遺障害・医療保険が補償される保険
・無保険車障害保険
事故の相手方が自動車任意保険に加入していない場合などの理由で賠償金の支払い能力がない場合に補償される保険
・自損事故保険
相手がいない単独事故の際に補償される保険
・車両保険
自分の車が傷ついたり破損した場合に補償を受ける保険
以上が挙げられます。
※チューリッヒ 自動車保険(https://www.zurich.co.jp/)より抜粋
この任意保険の中で人身傷害保険・搭乗者傷害保険・無保険車傷害保険の記名被保険者、すなわち本人の補償が制限されます。(本人以外は補償可能)
また、自損事故保険も補償外となります。車両保険については基本は保証外ですが約款で特定の者の飲酒運転の場合は保証外とされており、特定の者以外の者の飲酒運転の場合は補償されるケースもあります。
いずれにしても保険会社によって異なる部分もありますが、基本的には上記の補償制限がされてしまうと思っていた方が良いでしょう。
■飲酒事故の被害者の自動車保険
対して、相手側の飲酒運転事故により損害を受けた被害者の自動車保険は、結論からいうと、通常通り補償を受けることが可能です。
相手の事故の原因が飲酒であったことの有無には関わらず、事故に巻き込まれたことに変わりはありませんので、被害者は当然、強制保険である自賠責保険と任意保険の対人賠償保険の2つの保険で賠償請求を行なうことが可能です。
実際に被害者に補償される保険金額は、
「自賠責保険」
- 休業補償費・・・1日原則6100円
- 慰謝料・・・1日原則4200円
- 治療費・・・治療にかかった分
この3つを合計して120万円までが被害者へ補償されます。
また、120万円を超過した場合は、事故を起こした加害者の任意保険から支払われます。
その際に適用されるのは「対人保険」になりますので基本的に無制限となります。算定された損害額から被害者側の過失分がマイナスされた額が補償されることになります。
更に被害者自身が任意保険の人身障害保険・無保険車損害保険などに加入していれば、そこから保険金が支払われることもあるので、こういう事態が起こったときには保険会社に確認をとると少しでも損をせずに済むでしょう。
これらの保険を確実に受け取る為に注意したい点は、現場で示談に応じないこと、警察の通報は必ず行なうことです。
まず、大前提として飲酒運転は立派な犯罪ですし、示談を行なうことで事故自体を隠蔽される可能性もあります。
事故時に保険会社へ電話した際にも「警察へ連絡はお済ですか。」とほぼ必ず問われるでしょう。
相手の提案には応じずに事故を起こしたら、まず車両を安全な箇所へ移動し、救済すべき人は周りにいないかを確認したら、すぐに警察へ連絡するようにしましょう。
まとめ
飲酒運転の事故は人々の意識により減少傾向にありますが、それでも痛ましいニュースは後を絶ちません。
少しの気の緩みやこれくらいなら大丈夫という判断は非常に危険です。
自分の人生も他人の人生も棒に振ってしまう結果になってしまいます。
飲酒をする際には、鍵を預ける等、そもそも自動車を使わない等、対策に講じましょう。
飲酒運転はゼロにするという気持ちで一人一人が意識していくことが大切です。
FP・専門家からのコメント
松田 聡子(Satoko Matsuda)
ファイナンシャルプランナー。群馬FP事務所代表。明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保での法人コンサル営業を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在は法人向けには退職金制度の導入コンサル、個人向けにはiDeCoやNISAを有効活用したライフプランニング、リタイアメントプランニングで人生100年時代をマネーの面からサポート。また、金融ライターとしてWEBメディアに寄稿中。
【経歴】
- 明治大学法学部法律学科 卒業
- 約15年間システムエンジニアとして金融・物流の業務アプリケーションの設計・開発に従事
- その後、国内生命保険会社にて法人に対しての財務強化や福利厚生の提案営業に従事
- 2007年より独立系FPとして法人・個人の相談業務をスタート。確定拠出年金の講師や職業訓練の講師としても活動
【資格】
コメント
飲酒運転は減ってはいるものの、今でも1日に1件程度の飲酒運転による事故が発生しているのは非常に残念なことです。飲酒運転が原因で加害事故を起こした場合には、自動車保険の補償のうち運転者本人に関する補償は適用外になってしまいます。
それだけでなく、健康保険も飲酒運転による事故で運転者がけがをした場合の治療費には使えません。また、民間の生命保険会社の医療保険も一般的に泥酔で事故を起こした場合は適用対象外となります。
さらに死亡保険の災害死亡特約の免責事由にも該当するため、保険金の支払い対象になりません。
飲酒運転を起こすと社会的な制裁も受けなくてはなりませんが、経済的のも大きなダメージがあることを改めて認識し、お酒を飲んだら絶対に運転しないことを徹底してください。
天野こな美 (Konami Amano)
トヨタカローラ姫路株式会社に約5年間勤務。損害保険募集人資格保有。
<保有資格>損害保険募集人
コメント
車同士の事故を起こした場合、相手が酒気帯び運転をしていた場合は通常通りの補償が受けられます。
相手の様子から飲酒が疑われる場合、自分の身を守るためにも相手の挙動を注意深く見ておきましょう。
事故をしたとき、気が動転してその場で冷静な判断ができないケースが多いです。しかし、このような場面ほど冷静な対応をすることが大切です。気になることがあれば、保険会社や警察官に相談しましょう。
いわずもがな、ご自身が加害者になることはあってはなりません。一度お酒が入ってしまうと、判断力が鈍ることがあります。お酒を飲むときは車のキーを人に預けるなど、物理的に運転ができない状況を作ることが大切です。
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