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政府は2015年の3月31日に民法の改正法案を閣議決定し、国会に提出しました。これにより近い将来、民法は改正されることになるでしょう。
民法は皆さんの身近な生活に根付く法律ですが、改正が滅多にされず現在の日本経済や生活に対応しきれていない、と言われていました。それもそのはず、民法は明治29年に制定されましたが、明治31年に改正がされた以降なんと100年以上も改正がされていなかったのです。
そこで平成21年から民法改正に向けて政府が動きだし、実情に即した内容に改正するべく様々な改正条項が織り込まれることになりました。ここでは、自動車保険に影響のある「法定利率」の改正について見ていきましょう。
なお、法定利率以外の民法改正については法務省の法制審議会で随時、詳細に情報開示がされているので参考にしてください。
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法定利率の改正
法定利率は、借入金の利息や損害賠償金の計算の為に使用されているのですが、従来の民法では以下の様に年5%と定められていました。
第404条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。
これが、今回の民法改正により5%から3%に引き下げられることになります。また、3%に引き下げるだけでなく、今後は3年毎に市場動向に応じて1%ずつ見直す、いわゆる「変動金利」の形をとることになります。
自動車保険では、交通事故に遭遇し後遺障害を負ったり、死亡したりした場合に、将来的に働くことが出来なくなった為に得られない収入を「逸失利益」として計算します。そして、この逸失利益を基にして、被害者側は加害者に損害賠償請求をすることになります。
逸失利益は、以下の計算式により算出されます。
「基礎収入×(1−生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数」
そして、上記の計算式にあるライプニッツ係数に法定利率が利用されているのです。
ではこの逸失利益の計算に使用される法定利率が改正されるとどうなるか?「5%から3%への引き下げ」・「固定金利から変動金利への変更」によって自動車保険にはどのような影響が出るのか、について以下で見ていきましょう。
保険料への影響
上記の計算式にあるライプニッツ係数は、計算上利率が下がると係数が大きくなり、利率が上がると係数が小さくなるという性質があります。つまり、法定利率を引き下げるということは、結果として逸失利益が大きくなることを意味しています。
被害者側から見ると受け取る保険金が多くなるので被害者に有利な改正・・・の様にも思えますよね。確かに間違いではありませんが、単純に喜んでばかりはいられません。
なぜなら、法定利率が下がることで保険金が増えるのであれば、保険会社としては支払いが増えることを意味しています。その支払いを賄うためにはどうするかというと、保険料を上げるしかないのです。
従って、法定利率が下がると将来的に自動車保険の保険料が上がることが予想されます。
変動金利の影響
法定利率が変動金利になると、利率が高いときに後遺障害を負った人と、利率が低いときに軽度の障害を負った人がいた場合に、利率によっては後者の方が逸失利益が大きくなる可能性がある、という不合理な現象が起きることが懸念されます。
また、同じ後遺障害を負った被害者でも利率によって逸失利益が異なることになります。利率の見直しについては法務省の告示に従うので、交通事故が利率が変わった日より後なのか前なのかで逸失利益が大きく変わってしまいます。
法律で定められるものなので仕方がないですが、被害者感情としては課題が残りそうですね。
いつから変更後の民法が適用される?
法律は国民を拘束するため、簡単に改正することは出来ません。そこで、以下の様に多くのステップを踏んでようやく改正がされることになります。(参考:内閣法制局)
- 法律案の原案作成
- 内閣法制局での審査
- 閣議決定(国会提出のため)
- 国会での審議
- 法律の成立
- 法律の公布
現在は閣議決定により国会に提出がされた段階ですので、まだステップは3つ残っています。このステップに従って具体的に何年の何月に民法改正が適用されるか、ということは現段階ではわかりません。しかし、報道等によると2018年頃ではないか?と言われている様ですね。
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