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自動車保険会社(損保会社)とはいえ1つの企業ですから、絶対に倒産しないなんて事は有り得ません。
リーマンショックのような不景気の波に飲み込まれたり、地震などの災害によって保険金の支払い額が増えたりすると、倒産してしまう可能性は有ります。
保険会社が倒産した時に困るのは、やはり“契約者”です。
契約はどうなるのか?支払った保険料は返ってくるのか?タイミング悪く倒産と事故が重なってしまったら?など色々な不安を抱く事になるでしょう。
もし保険会社が倒産してしまったらどうなるのでしょうか?以下で見ていきます。
倒産前後に事故を起こした場合に保険金は支払われるか
結論を先に書くと保険金は支払われます。
倒産前に起こした事故であろうが、倒産後に起こした事故であろうが補償されます。
ただし、倒産後3ヶ月を過ぎて発生した事故については、支払われる保険金の額が80%となります。
事故の時期 | 支払われる保険金 |
---|---|
倒産前 | 100% |
倒産後3ヶ月以内 | 100% |
倒産後3ヶ月超 | 80% |
自賠責保険は事故の時期に関わらず100%補償されます。
契約していた損保会社が倒産しても全額自己負担となることは有りませんので、安心して下さい。
では、誰が倒産した保険会社に代わって保険金を支払ってくれるのでしょうか?それは損害保険契約者保護機構という団体です。
損害保険契約者保護機構は、保険契約者を保護する観点から全損害保険会社が参加して設立された団体です。
この団体が倒産した保険会社に代わり、契約者が不利な立場にならないよう保険金の支払いを行ってくれます。
なお、自動車共済にはこのような団体は有りません。
倒産後の保険契約はどうなる?すぐに変更すべき?
契約していた保険会社が倒産した場合、保険契約は以下のいずれかに引き継がれます。
- 救済保険会社(倒産した保険会社とは別の保険会社)
- 損害保険契約者保護機構(当団体が設立した子会社が引き継ぐ事も有る)
そのため、契約していた保険会社が倒産したからと言って、突然保険契約が無効になる事は有りません。
なお、救済保険会社又損害保険契約者保護機構(又はその子会社)への保険契約の引継ぎ中の事故も補償されます。
引継ぎ時期については個々の事例によって異なります。
ただ倒産後3ヶ月超の時期に起こした事故に関する補償は80%までしか行われません。
そのため、契約している保険会社が倒産したらすぐに保険会社を変更した方が良いでしょう。
解約返戻金は支払われるのか?
救済保険会社又は損害保険契約者保護機構に契約が引き継がれても、保険を解約する事は可能です。
ただし、その場合に支払われる解約返戻金の額は80%となってしまいます。
例えば、倒産していなければ解約返戻金を10,000円受け取れる場合なら、倒産してしまうと10,000円の80%である8,000円しか解約返戻金を受け取れなくなります。
もっとも、倒産後3ヶ月を経過すると事故を起こした場合に補償される保険金すら80%になってしまうので、解約返戻金の20%を捨ててでも、解約して保険会社を変更した方が良いでしょう。
倒産しそうな会社かどうかを調べる方法
たとえ会社が倒産しても保険金は支払われる訳ですから、契約者側としてもそこまでアタフタする必要は有りません。
しかし、倒産から3ヶ月経過した後の事故に関する保険金支払額は80%に減額されるわけですから、倒産する可能性が有るのであれば事前に保険会社の乗り換えをしておきたい所ですよね。
そこで、保険会社が倒産しそうかどうか自分でチェックする方法を2つ程紹介しておきます。
これらの指標をチェックしてみて問題有りそうなら、契約の乗り換えを検討してみて下さい。
ソルベンシーマージン比率をチェック
まず一つ目が「ソルベンシー・マージン比率」です。
ソルベンシー・マージン比率とは、簡単に言うと保険会社の財務健全性を表す指標の事です。
決算毎に決算書にて公表されています。
この比率が200%を下回ると金融庁から是正措置命令が出ます。
そのため、基本的に数値が大きければ経営が健全であると言えます。
しかし、絶対的な指標ではないので参考程度にチェックしてみて下さい。
ソルベンシー・マージン比率を見て保険会社の財務健全性をチェック
ソルベンシー・マージン比率の欠点を1つ挙げるとすれば「情報がタイムリーでは無い」という点です。
前述したように、決算毎つまり3ヶ月毎に発表される数値です。
そのため、前回の決算では数値が高かったのに今回の決算で急激に低くなっている事も有り得ます。
したがって、ソルベンシー・マージン比率だけで保険会社の先行きを推測するのは止めた方が良いです。
そこで保険会社の財務健全性をチェックするための指標をもう1つ紹介しておきます。
保険財務能力格付もチェック
「保険財務能力格付」も保険会社の財務健全性を表す指標です。
この指標は格付会社がそれぞれ発表していて、格付会社や保険会社のホームページで見る事が出来ます。
この財務健全性を表す指標は、格付会社によって若干異なりますが、ほとんどの場合「A・B・C」の3文字のローマ字を用いて評価しています。
「A」が上位格付、「C」が下位格付となり、その中でも「AAA・AA・A」のようになっていて文字数が多い方がより上位の格付となります。
さらに、「+(上位)・-(下位)」又は「数字(1が上位、3が下位)」などを用いて詳細に格付けが行われています。
この保険財務能力格付は、保険会社の財務状況が変化する度に公表されるので、タイムリーな指標として利用する事が出来ます。
契約している会社が倒産しそうな場合に取るべき行動
テレビニュース等々で自分が契約している会社が倒産する可能性がある!と報じられた時に取れる契約者の選択肢は以下の2つです。
- ① そのまま契約を継続する
- ② 解約して他の保険会社と契約する
この時、保険会社が倒産しなければ特に影響は有りません。
しかし、保険会社が倒産した場合は、前述したように「保険金」と「解約返戻金」の減少というリスクを負う事になります。
では、「②(解約)」を選択したとしましょう。
この時、保険会社が倒産しなければ、契約の中途で解約した事により等級の進みが遅れてしまう事になります(20等級だった場合は関係有りませんけどね。)。
しかし、保険会社が倒産した場合は、「保険金」と「解約返戻金」の減少というリスクを負う事は有りません。
なお、保険の更新時期に解約するのであれば等級にも影響は有りません。
自動車任意保険を契約途中での解約は得?損?
行動 | 倒産した場合 | 倒産しなかった場合 |
---|---|---|
①(契約の継続) | 保険金・解約返戻金の減少のリスクを負う | 影響無し |
②(解約) | 影響無し | 等級の進みが遅れる |
倒産するかどうかは正直素人が判断できるものでは有りません。
なので、等級の進みが遅れたとしても”経営が悪化している”などの情報が出てきたら、早めに他の保険会社に移った方が賢明かもしれませんね。
【参考】自動車保険の代理店が倒産したらどうなる?
保険会社が倒産するぐらいですから、小規模な代理店が倒産してもおかしく有りません。
ただ契約者にとっては自動車保険を契約した代理店が倒産してもほとんど影響は有りません。
契約内容も補償もそのままです。
手続きをする窓口が他の代理店か保険会社に移るだけなので、代理店の倒産に関しては気にしなくても良いでしょう。
FP(専門家)からのコメント
山﨑 裕佳子(Yukako Yamazaki)
通関士として貿易会社に勤務の後、メーカー、銀行など様々な仕事を経験。2019年に2級FP技能士、AFP取得。その後、FP会社にて記事の執筆や監修を経験し、フリーランスとして独立。
コメント
損害保険契約者保護機構により、万一、損害保険会社が破綻・倒産した場合でも、契約者の不利にならないように保険金が満額支払われる仕組みがあります。
日本国内で損害保険業の認可を受けている全ての損害保険会社は損害保険契約者保護機構に加入しています。(但し、少額短期保険業者は対象外)
従って、加入している損害保険会社が倒産したとしても、慌てて他社へ自動車保険を切り替える必要はありません。倒産して3か月間は保険金が100%支払われますので、他社への自動車保険の切り替えは、じっくり検討しましょう。
このような状況に遭遇することは多くはないかもしれませんが、豆知識として知っていると、もしもの時に役に立つかもしれませんね。
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